
スタッフコラム(最新10件)
裁判員裁判の現場から―市民モニターの声⑦
2012年2月4日
裁判員ネットでは、市民による裁判員裁判の傍聴と、傍聴した裁判について自分たちなりの「判決」を出してみるという「模擬評議」のふたつから成る「裁判員裁判市民モニター」を実施しています。2012年2月現在、170名を超す方に市民モニターとして裁判員裁判を傍聴していただいております。
ここでは、市民モニター終了後にお寄せいただいた裁判についてのご意見やご感想のうち、了承を得たものについて紹介いたします。
■初めての裁判傍聴を終えて
私にとっては今回が初めての裁判傍聴でした。学問や仕事、その他何事についても言えることだと思いますが、遠くからは全てが激動し、感動的な示唆と驚きに満ち溢れたものに見えるのに、一度その中に飛び込んでみると、いかに地道な作業の積み重ねの上にそれが成り立っているかが分かります。今回の裁判傍聴も、そのような経験の一つであるように思われます。
モニターシートの記入やディスカッションを通して、今回の経験についてじっくり考えているうちに、自分の認識している法学の枠組みの中に「訴訟法」という新たな地平線が開けてきたのではないか、という気がしてきました。刑法の試験問題には、犯人に故意があったかなかったか、錯誤があったかなかったかというようなことは全て書かれています。実際の裁判ではそういった点が争われるのだろうとは思っていましたし、刑事裁判の手続きが刑事訴訟法で定められている、という程度の認識はありました。しかし、実際の裁判を傍聴するまでは、この2つが私の中ではうまく噛み合っていなかったのです。図書館へ行くと、訴訟法の棚で裁判官の事実認定に関すると思われる本をいくつか発見することができました。ああこれを巡って争っていたのかと、非常に新鮮な驚きを感じました。裁判所に赴き、現場を見たことによって大きな意義のある発見ができました。
実際に裁判を傍聴することで、裁判員になることが一般市民に大きな肉体的・精神的負担を強いることはすぐに分かりました。私にとってむしろ重要だったのは、もし自分が裁判員になったとして、よく言われる「人を裁くことの精神的重圧」をきちんと感じることができるだろうか、ということです。
裁判員はほぼ無作為に「選ばれる」ものであり、自分の意思で「なる」ものではありません。中には普段の仕事に支障が出ることへの不満を持つ人もいるでしょうし、なんで私がこんな面倒を、と思う人も少なくないのではないかと思います。また、どんなに真剣に裁判に取り組んだとしても、それを評価してくれる人は法廷の外にはいないのです。このような条件の下で、私は果たしてどれほど真剣に赤の他人である被告人について考え、「精神的重圧」を感じることができるだろうか、と思うのです。
自分の判断で他人の人生を左右する重圧に苦しむのも人間ですが、『12人の怒れる男』に登場する面々の思い(どうせこいつが犯人に決まっている、面倒だからさっさと終わらせよう)もまた、それと同じくらいありふれた人間の姿だろうと思うのです。果たして自分がどのような心持ちで裁判員裁判に臨むことになるのか、その答えはまだ見つけられずにいます。
(宗伸一郎)
■「正解」がわからないまま判断を下す難しさ
今回私が傍聴したのは、被告人が有罪か無罪かを判断しなければならない裁判でした。今まで私は何度か裁判を傍聴してきましたが、このような、言わば100か0かを決めるケースの裁判を傍聴するのは初めてで、雰囲気の重さを感じずにはいられませんでした。
しかも、今回の裁判では被告人は完全黙秘を貫いており、全く「声」を発することがありませんでした。自分が事件当日どこにいて、何をしていたのか、さらには自分の名前さえも証言しませんでした。私は、被告人が何一つ「声」を出さないということ、そして被告人抜きで裁判がどんどん進んでいくということに恐ろしさのようなものを感じました。有罪か無罪かを争う裁判であるのに、被告人は何一つ「声」を出さないのです。それは、「どうせ、有罪になるのだから反論するだけ無駄だ」など、被告人なりの考えがあってのことなのかもしれません。しかし、それはあくまで私の想像でしかありません。本当のことを知っているのは被告人だけなのであり、それを確かめる術はないのです。
今回、被告人が完全黙秘に徹した裁判の傍聴を通じて、今までの裁判で私がいかに被告人の言葉に重きを置いていたのかを痛感させられました。本来ならば被告人を中心にして進んでいくところを被告人抜きで進んでいった今回の裁判では、決定的といえる証拠が何一つ上がらず、被告人が本当に犯人であると言えるのかという疑いにますます拍車を掛けているように感じました。そのような中で弁護側や検察側が必死に証拠と被告人との関連性の有無について語っても、私はいまひとつリアリティを感じることができませんでした。
こうした経験を通じて、私が一番考えさせられたことは、検察の立証責任についてです。刑事裁判の原則として、本来ならば、少しでも疑わしき事情があるのならば、被告人は無罪とすべきということが言えます。一方で、その疑いがあくまで抽象的なものであるならば、検察の立証責任を侵害するには至らないという但し書きがつけられています。今回のケースでは、弁護側は合理的な疑いが残ると主張し、検察側は弁護側の主張する疑いはあくまで抽象的なものだとして、真っ向から意見がぶつかり合っていました。私が論告・弁論を聞いたときはどちらの言い分にも一理あると感じられ、どちらが「正しい」のかは全くわかりませんでした。「合理的な疑い」と「抽象的な疑い」の間に明確な線引きがなされているわけではない以上、どちらの言い分にも納得できる部分があるので、簡単に決めることはできないと感じました。これを、裁判員に選ばれた一般市民は決めなければならないのです。司法に関して全くの素人である一般市民が判決を下さなければならないということは、相当酷なことだろうと私は感じました。今回のような100か0かを決める場合ではその責任もより一層大きなものになります。裁判員の精神的負担を考慮した場合、今回の事件は非常に難しいものだったのではないか、そのように私は今回の裁判を傍聴して感じました。
(爲田世良)
新年のご挨拶を申し上げます
2012年1月5日
日頃から多くのみなさまよりご声援・ご協力を賜り、本当にありがとうございます。
今年も裁判員ネットは新しい年を迎えることができました。
日本は昨年、震災や原発事故という大きな災禍を経験し、様々な仕組みやシステムが大きく揺さぶられ、それと同時に人々の絆の大切さを改めて認識した1年でもありました。この国は守るべきものを守りつつ、変化が求められる時代になったと言えます。
刑事司法の分野でもこの国は変化の只中にあり、今年は大変重要な1年となります。2009年5月に新しく始まった裁判員制度は、施行より丸3年を迎え、法律に基づいて制度見直しに向けた検討が始まります。今後の裁判員制度を左右していく年になることから、今まさに、私たち市民は主権者としてこの裁判員制度というしくみについても考え、応えることが求められています。その意味で市民の声を集めていくことは、これまで以上に大きな意義があると考えております。
裁判員ネットでは本年も裁判員を経験された方の声や、「裁判員制度市民モニター」をはじめ、様々な形で市民の声を集め、地道に積み重ねて行きたいと思っております。
そして多くの皆さんと一緒に裁判員制度についての議論の場を作りつつと、あるべき姿を模索しながら、情報発信を行っていく所存です。
変わらぬご指導ご鞭撻を賜れれば幸いでございます。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
(裁判員ネットスタッフ一同)
フォーラム&講座開催にむけて準備中です
2011年10月30日

昨日は裁判員ネットのスタッフ、学生メンバーで「フォーラム」「講座」開催に向けてのミーティングを行いました。裁判員ネットではこの秋もフォーラム・講座をいくつか開催する予定です。
11月20日(日)には東京・お茶の水女子大学にて、「裁判員制度フォーラム」を実施致します。
このフォーラムでは、裁判員裁判を傍聴した「市民モニター」によって集まった裁判員裁判の現場についての情報を、広くみなさんにご報告して共有したいと思います。また、裁判員は被告人の有罪か無罪の判断と、有罪の場合は被告人の刑の重さまで考える必要があるのですが、今回のフォーラムではゲストをお呼びして、被告人の「判決後」について(刑務所や更生などについて)市民の視点から考えていきたいと思います。
さらに、この秋は地域や学校のみなさんと連携しての「講座」「出前授業」などもいくつか行う予定です。
これらのイベントや講座を通して司法のあり方や裁判のあり方について、私たち市民がともに考えることができる機会となれば・・・。そんな想いを胸にメンバー一同準備を進めています。
フォーラム・講座につきましては、随時このホームページでも詳細をお知らせ致しますので、どうそご期待下さい。
(裁判員ネット理事・坂上暢幸)
裁判員裁判の現場から―市民モニターの声⑥
2011年8月13日
裁判員ネットでは、市民による裁判員裁判の傍聴と、傍聴した裁判について自分たちなりの「判決」を出してみるという「模擬評議」のふたつから成る「裁判員裁判市民モニター」を実施しています。2011年5月現在、100名を超す方に市民モニターとして裁判員裁判を傍聴していただいております。
ここでは、市民モニター終了後にお寄せいただいた裁判についてのご意見やご感想のうち、了承を得たものについて紹介いたします。
■市民が重大事件にかかわることの難しさ
今回傍聴した裁判は社会的注目度が高い裁判でした。傍聴席に空席はほとんどなく、記者の姿が多かったこともあり、社会的関心の高さを改めて実感させられました。
今回の裁判は極刑が予想されるものだったので、果たして一般の市民である裁判員が極刑という結論を出せるのか、ということに私は注目していました。私は、裁判員はよほどの凶悪事件かつ被告人が犯人と断定できる場合においてのみ、極刑を下し得るのだろうと考えていました。裁判員は人を裁いたことがないので、間違いがないように非常に慎重になるだろうと考えたからです。
しかし、傍聴後に行った市民モニター同士の意見交換では、冷静に証拠だけを考慮する人と被告人の人相や雰囲気にのまれてしまう人とに分かれてしまいました。私はこのことにショックを受けました。モニターのなかに被告人の雰囲気にのまれてしまう人が居たということは、裁判員のなかにも雰囲気にのまれてしまった人が居たかもしれないと考えられるからです。そのような状態の人が判決に加わるのは恐ろしいことだと思いました。
今まで私は裁判員制度についてプラスの面だけしか考えていませんでした。しかし、今回の市民モニターでは新たな問題点を垣間見たような気がします。重大な事件であるという圧迫感や感情にのまれた判断、判断に窮した際の人任せの結論等です。比較的軽い事件の裁判なら、自分の考えを保つことができるでしょう。ですが今回のように重い事件だったら、自分の考えに自信を持つことが難しくなるかもしれません。そのために他の裁判員の意見に同調してしまうかもしれません。または裁判官の意見に裁判員が全面同意するような状態になってしまうことも考えられます。そのような事態を避けるためにはどのようにしたらよいのでしょうか。裁判員制度の心理的な面の課題が見えた傍聴でした。
(佐藤愛美)
■緊張感の中で多くのことを考えた
私は今回、数日間に渡って行われた裁判のうちの一部を傍聴しました。以前に裁判の傍聴を経験していたため、裁判がどのように進められていくのかということは理解できていました。しかし、実際に被告人が手錠をかけられた状態で入廷してくるたびに、張り詰めた緊張を感じました。この緊張感に慣れるということは無いのだと思います。自分の目の前に、人を殺したかもしれない人間がいるという事実はとても重大でした。公判中、集中して検察官や弁護士の話を聴いている間でも、意識は被告人へと向かっていました。
今回の裁判では被告人が黙秘をしていたため、被告人の黙秘権についても考えるきっかけになりました。始めは、黙秘は被告人の作戦なのだろうか、被告人は反省していないのか、言いたいことはないのかなどと、被告人が黙秘をすることをマイナスに捉えていました。しかし、他の市民モニターの方々と意見交換をし、冷静に考える中で、たとえ被告人が黙秘をしていたとしても、それは権利の行使であり、量刑に不利に影響することはあってはならないのだということに気づかされました。
被告人が黙秘していたこともあって、証人の多さが印象に残る裁判でした。証拠調べの中で事件の当事者だけでなく、調査過程に携わった多方面の専門家が証人として法廷に立っていたことに驚きました。専門性の高い内容の証人尋問が続く中で集中が途切れそうになった時、裁判員となった方々は果たしてこの内容がすべて理解できているのだろうかと、ふと疑問に思いました。裁判員は手元にある資料を目で追っているようでしたが、頭でもしっかり事件を追って整理しながら聴くことができていたのでしょうか。
上で述べたように、難しさを感じる場面もありましたが、一方で、法律的知識がない一般市民に対しての配慮もしっかり見ることができた裁判でもありました。大型モニターの使用はもちろん、弁護側は最終弁論で大きなボードを使用しその内容を簡潔に示していました。ボードを見ることで要点ごとに整理することができて、弁護士の「裁判員に真剣に考えてほしい」という熱意が伝わってきました。1つ1つの工夫が、裁判員の肉体的疲労や、精神的負担を軽減するのだと思います。だからこそ、ここは良かった、わかりやすかったという裁判員制度の工夫を共有し、法曹の方々に伝えることができたら良いのではないかと思います。
(廣瀬百合香)
■犯罪、司法、そして死刑に真正面から向き合う
日本の法律では、被告人に対して黙秘権があたえられています。刑事訴訟法311条1項に「被告人は、終始沈黙し、又は個々の質問に対し、供述を拒むことができる。」と記述されており、「被告人の権利である黙秘権行使の事実から不利益な事実を推認することは許されない」(田口守一『刑事訴訟法第5版』133頁)とされています。今回の裁判を傍聴するまで、私は黙秘権という権利がこんなにも複雑で重要なものだとは思いませんでした。
被告人が証言台の前に立っても何も語らない、述べないということは、事件の全容解明を非常に難しくさせます。ニュースなどで「黙秘」という文字を目にすると、これまでは“黙秘=やましいことを隠そうとしている”という被告人にとって不利な考えしか思い浮かびませんでした。しかし、実際に黙秘を続ける被告人を目の前にすると、なぜ被告人が黙秘権を行使するのか、彼は法廷という場で何を伝えようとしているのか、など初めて被告人が黙秘をする“理由”を深く考えるようになりました。何も話さないという行為は、実は肉体的にも精神的にも苦痛を伴う行為なのではないかということに気付いたからです。口を固く結んだままであっても、視線や顔色を変える被告人の姿を見て、彼も私達と同じ一人の人間なのだと強く感じました。黙秘権を行使することは被告人の意志によるものであり、強いメッセージです。被告人が自分で自分を守る権利として、黙秘権は非常に重要であり、なくてはならないものだと思いました。
また今回の裁判傍聴を通して、「死刑」という制度に対しても深く考えさせられました。2009年5月に裁判員制度が導入され、一般市民が司法の場に参加し始めてから約2年がたちます。裁判員裁判においても死刑判決が下されるようになり、市民が犯罪、司法、そして死刑というものに真正面から向き合わなければならない時代がやってきたのです。しかし、私は何の法律知識もない一般市民が、果たして死刑という刑罰を下してもよいのか疑問に思います。これまで被告人の顔も名前も知らなかった自分が、何の法律知識もないまま目の前の被告人に死を宣告する、そう考えると非常に恐怖を感じます。また、死刑が確定したとしても、刑がいつ執行されるかなど裁判員にとっての精神的負担はずっと続くでしょう。重大事件における裁判員裁判の進め方には、これからも議論する余地があると私は思います。しかし、今まで他人事のように感じていた「死刑」という問題に私たち市民が取り組むことは、人々に“命の重さ”を考えさせる非常に重要な意味をもつことだとも感じました。今回の裁判傍聴を通して、これこそが裁判員裁判を行う意義ではないのか、私はそう考えます。
(長田咲)
「検察のあり方」を考える―自白偏重からの脱却に向けて
2011年7月31日
裁判員ネットでは、裁判員制度および刑事司法に関する問題、裁判員制度から見えてくる社会問題などに関するイベントに学生メンバーが参加し、レポートを行っております。今回は、2011年6月22日に開催された、日本弁護士連合会主催の「検察のあり方検討会議の提言を受けて―刑事司法改革と冤罪の根絶を目指して」というシンポジウムに参加してきましたので、ご報告いたします。
■検察のあり方検討会議を受けて
現代日本の法制度の現実を知るために、日弁連主催のイベント「検察のあり方検討会議の提言を受けて」を公聴してきました。今回のイベントは、大阪特捜部による犯人隠ぺい事件、いわゆる厚生省元局長無罪事件によって失墜した検察への信頼をいかにして回復するか?をテーマに行われた「検察のあり方検討会議」を経て出された提言についてパネルディスカッションを行う形で開催されました。
「検察のあり方検討会議」は、検察の健全化の道を検討するにあたって、国民の視点も汲み取り、多様な角度からの検討を加えて検察の信頼回復の道を探ることを目的とした会議です。平成22年11月10日に第1回会合が開催されて以後、15回に渡る会合が重ねられました。検察や法務省内部へのヒアリングだけでなく、韓国の捜査実情の調査を行った上で活発な議論がなされた結果、提言が取りまとめられました。
今回のイベントのパネリストは、検討会議のメンバーの一部の方々で、その方々の言葉の節々から検討会議の様子が感じられました。会議は非常に活発であったが、それゆえ全員の意見がまとまらず、委員の最低限の共通見解しか提言という形にできなかった、そして、今回のパネリストの方々はこの提言が十分なものとはいえないと考えている、とのことでした。
検討会議が挙げた提言は、検察に改革を提案するのではなく改革の「試行を」提案する内容であり、当たり障りのない表現にとどまっていることから「カタチだけの会議だったのかな」と思ってしまいました。しかし、会議が活発になるあまり、委員の最低限の共通見解しかカタチにできなかったというお話を聞いて、委員の方々は真剣に意見を交わしていたということが分かり、安心したことが印象に残っています。
■取り調べの可視化?
取り調べの可視化とは、取り調べの様子を録音・録画することによりこれまで密室で行われてきた取り調べを開かれたものとし、取り調べの正当性の確保をめざす取り組みです。
厚労省元局長無罪事件においては、検察官が捜査の意図と沿うように、事実にもとづかない供述調書を作成したことが明らかになり、問題となりました。同様の指摘が東京地検特捜部でもなされたことがあり、大阪地検特捜部に限られた問題ではないことが窺われます。検察官による供述の誘導を防止するためには、取り調べ及び供述調書に過度に依存した現在の捜査・公判実務を根本から改める必要がある、と検討会議では考えられました。そして、虚偽の自白によるえん罪を防止するためには被疑者の取り調べの録音・録画が有効であり、その範囲を積極的に拡大していくべき、と提言されました。
被疑者の供述調書を取るのは、事件の真相を明らかにするためです。被疑者が被告人となり、裁判で供述調書が証拠として使用された場合、その証拠そのものが歪められたものであったら、公平な裁判は成り立ちません。公平な裁判を行うためにも、取り調べの際に録音や録画を行うべきなのでは、と思いました。
現在でも、担当検察官の判断により、裁判員裁判対象事件の被疑者の取り調べの録音・録画が行われることはあります。おそらく裁判員に配慮して行ったと考えられますが、当事者である被疑者にも同様に配慮すべきなのではないでしょうか。また、知的障がい者などコミュニケーション能力に難がある被疑者の取り調べにも、録音・録画の採用を求める、また心理・福祉関係者を立ち会わせるべきという提言もありました。
このような提言を聞くと、今まで被疑者は配慮されない存在だったのだな、と改めて思いました。また同時に、被疑者の人権は法律で保障されているもののどうしても力で屈服させている印象と、被疑者を公判で有罪にすることに気を取られて、事件の真の犯人を捜し出すことを疎かにしているのではないか、検察の使命は有罪判決の獲得ではなく公正な裁判の実現ではなかったのか、という疑問を抱きました。
検察のあり方検討会議では、先ほど述べた通り「取り調べの可視化」の試行を検討すべきという旨の提言がなされました。「試行を検討すべき」という曖昧な表現が、問題の複雑さを表していると感じます。供述調書を過度に依存した、現代の司法制度を改正すべき、との提言もありました。
公判内での被告人の供述の信用性が乏しいと判断された場合、捜査段階の供述調書が事実認定に用いられることが多いのが現状です。そのため検察官としては公判内の声に重きを置かず、捜査段階の供述調書を重視しているようです。日本で捜査段階の供述調書を重視するようになったのは、犯罪成立要件の内面的な部分を、被疑者の自白によって判断する伝統があるからと考えられています。自白を得るための取り調べは1日何時間もかけられ、しかも長期間行われる場合もあります。特に否認事件であればさらに長期間になります。そのような状態で引き出された自白は、本当に被疑者自身の言葉だと言い切ることができるのでしょうか。
■日本の刑事司法制度を変えるべき?
日本の刑事司法制度は、変革のときを迎えているのではないでしょうか。裁判員制度の導入により、それまで法曹三者のいわば「閉じた」制度だった刑事司法制度に、国民の視点が加わりました。このことは、手続きの透明性や人権意識に、新たな視点が導入されたのだといえます。また現代は、DNAを利用した捜査など、科学的な捜査が非常に発達してきています。被疑者の自白のみに頼らず、科学的で客観的な証拠を採用しながら、犯人を捜し出すことも可能なのではないかと思います。取り調べ室という密室で取られた供述調書に依存した現在の刑事司法制度は、もはや時代遅れなのではないでしょうか。
(裁判員ネット・佐藤愛美)
裁判員ネット・インターン体験記 その⑥
2011年7月2日
裁判員ネットでは、定期的に裁判員ネットで活動する学生の方をインターン生として募集しており、このたび第5期インターン生の募集を開始しました。インターン生は、裁判員制度市民モニター企画・運営などを担当し、それを通して裁判やそこから見える社会の問題点について取材や議論を通して自分たちで考え、広く発信する活動をしています。
今回は、これまでのインターン生の「体験記」をお届けいたします。裁判員ネットでの活動に興味を持たれた方や、「インターンをやってみたい」と思われている学生のみなさんは、ぜひご一読ください。
■インターンシップを通じて学んだこと
第4期インターン生・宗 伸一郎さん(法学部・3年)
私が今回のインターンを通じて学ぶところがあったのは、主に以下の三つでした。
第一に、裁判員制度に関する知見が深まったということです。裁判員ネットは、市民の視点から、裁判員制度についての議論の機会をつくり、あるべき姿を模索し、情報発信を行っていく団体ですが、その中で我々インターンにとっての具体的な第一の目標は、フォーラムを成功させるということにありました。何度も会議を行い、市民モニターから得られた情報を分析し、議論を重ねました。また今後裁判員になるかもしれない市民はもちろん、裁判員経験者や、法律実務の専門家など、様々な立場の方々の意見に触れたことで、私にとって裁判員制度は、インターン開始前とは全く違った生き生きとしたものに見えるようになりました。
第二に、イベントを成功させるための準備の大切さを改めて思い知りました。市民モニターで情報を集めた後、イベントの広報活動を担当しました。準備は「できる事は全てやる」という方針に従って徹底的に行われたので、初めのうちは「そこまでやらなきゃいけないのか」と思ったこともありました。しかし、フォーラム当日には、私はその考えをすっかり改めざるを得なくなりました。裁判員制度について考えることは非常に重要であるとはいえ、残念ながらさほど注目を集めるテーマとは言えません。にもかかわらず、フォーラムには本当に多くの方に足を運んでいただき、これはやはり準備が実を結んだのだ、あれだけの準備が必要だったのだと思うようになりました。
第三に、効率の良い組織がどのように動いているのか、直に見ることができたということです。前述の通り徹底した準備を行ったので、裁判員ネット全体としてなすべき業務もその分多くなりました。それらの仕事の分担・役割が決められ、実行されていく様子が、非常に効率的であると感じました。なんとなく集まりなんとなく活動している組織では、とてもこうは行かないのではないかと思います。
この他にもたくさんのことを(主に失敗を通して)学んだのですが、ここでは比較的言葉にしやすいものだけを取り上げ、私のインターン体験記としたいと思います。
■「伝える」ことの難しさに直面した
第4期インターン生・魚谷理恵さん(外国語学部・3年)
裁判員ネットでインターン生として活動して、私は多くのことを学びました。フォーラムや市民モニター、提言起草など様々なイベントへの取り組みを通して、裁判員制度に対する自身の理解を深め、自分なりの問題意識を見つけることができましたし、それぞれのイベントに向けての準備作業の中でチームワークの大切さ、そして支え合うことのできる仲間がいることのありがたさを肌で感じることができました。
このインターンでの活動を通して私が最も心に残っていることは「伝える」ことの難しさです。裁判員ネットの活動を通して、私は常に他者に対して「伝える」ことを求められてきたように感じます。提言起草や日々の会議の中でいかに自分の意見や視点、考え方を「伝える」のか、議事録やメール文でいかに的確に、分かり易く要旨を「伝える」のか、フォーラムの場で裁判員ネットとしての考え方をいかに正確に、間違いなく来場者の方々に「伝える」のか…など、様々な場面で「伝える」ことを常に求められ、その度にその難しさに直面しました。これまでの私は、自分の伝えたい内容を、自分の好ましい方法で伝えることで、コミュニケーションをとれたものだと思い込んでいたように思います。しかし、裁判員ネットでの活動を通して、「伝えたい内容だけでなく、自分の思いや考え方をいかに相手に伝えるのか」という部分にも意識を置くことができるようになったと思います。
また、裁判員ネットでの活動は私に素晴らしい仲間との出会いをもたらしてくれました。この裁判員ネットの活動には様々な人が、それぞれ熱い思いを持って、全力で取り組んでいます。その「熱さ」ゆえ、時に意見が分かれ、侃々諤々の議論をすることもありましたが、どんな時でもしっかりと議論をして、相手のことを理解するための努力を惜しまない仲間の中に身を置くことで、全力で問題に取り組むことの清々しさ、議論を経て終着点にたどり着いた時の達成感を知ることができました。自分が疑問に思ったことや取り組みたいと思ったことについて声をあげれば、全力でその投げかけに返答してくれる人たちがいる。そして、頑張れば頑張った分だけ評価され、信頼を得ることができる。打てば打つほど響く、素晴らしい環境に身を置けたことは私にとって大きなモチベーションになりました。
裁判員ネットでインターンを始めたきっかけは、純粋に「裁判員制度について知りたい」というものでした。しかし、インターン生としての活動を終えるにあたって、この活動を通して得たものは裁判員制度に関する知識や視点に留まらず、これからの生活の中で私にとって重要となるであろうたくさんの経験やスキルにまで及ぶと感じています。
■積極的に動くほどに自分の可能性を広げられる
第4期インターン生・爲田世良(法学部・1年)
私は、自分には話す力や段取りのスキルといった基礎的な能力が不足していると感じていました。将来社会に出て活動していくため、こうした社会人としての力を身に付けたいという思いで裁判員ネットのインターンへの参加を決めました。
半年間のインターン活動に取り組んでいる中で私が特に成長したと感じたことは、先を見据えた計画性を持ち、全体を見渡して行動に移すという点でした。フォーラムを開催するにあたり、広報の部門を担当したのですが、その計画立案や目標設定を詳細に行う必要がありました。その際様々な事情を考慮しなければならず、段取りを組む力や変化する状況に対して対応する能力の重要性を強く実感しました。やり終えた時の達成感はひとしおであり、自分の中でやりきったことに対する自信も芽生えました。
また、話す力に関してですが、インターンシップに参加するからには、常日頃感じていた苦手意識を克服し、むしろ得意分野にしたいと考えていました。そこで、大勢の前で発表することにチャレンジしてみようと決め、フォーラムでの発表者として自ら手を挙げました。そして、なぜ自分は話すことが苦手なのか、話すことを自分のものにするためにはどうすればいいのか、といった悩みや疑問をスタッフの方に相談する機会を得、それを通じて助言を頂くことで、自分なりに考えるきっかけとなりました。何より、人前で話すということを大きな舞台で経験できたことは非常に大きな意義があると感じており、とても大きな財産となりました。この経験から、積極的に行動することで自分の可能性を広げることができるのだという学びを得ることができました。
インターン活動全体を通じて強く実感したことは、全ての行動に対して責任が伴ってくるということでした。そのため常に先を見据えた行動や何度も検討する習慣を身につけることができました。こうしたものは裁判員ネットのインターンに参加したからこそ身につけることができたのだと感じていますし、さらに多くのことを身に付けたいというモチベーションを抱くようにもなりました。そうした思いから今後も裁判員ネットの一員として自己の成長を図るとともに、他のメンバーをリードできるような存在になることを目指して頑張りたいと思います。
その他のインターン体験記はこちら
裁判員ネット・インターン体験記 その⑤
2011年7月1日
裁判員ネットでは、定期的に裁判員ネットで活動する学生の方をインターン生として募集しており、このたび第5期インターン生の募集を開始しました。インターン生は、裁判員制度市民モニター企画・運営などを担当し、それを通して裁判やそこから見える社会の問題点について取材や議論を通して自分たちで考え、広く発信する活動をしています。
今回は、これまでのインターン生の「体験記」をお届けいたします。裁判員ネットでの活動に興味を持たれた方や、「インターンをやってみたい」と思われている学生のみなさんは、ぜひご一読ください。
■挑戦する機会を与えてくれる
第4期インターン生・廣瀬百合香さん(法学部・1年)
私が裁判員ネットの存在を知ったのは、大学のキャリアセンターでインターン生募集のチラシを見たからです。「インターンシップ」、「裁判員制度」というキーワードに魅かれ、その場で問い合わせました。漠然とした動機から応募したため、その時は、自分がその後半年間、こんなにも良い経験ができるとは思ってもいませんでした。
私は、2月初旬に海外旅行に行ったため、同期のインターン生と一緒にスタートをきることができませんでした。そのため「半年間一緒にみんなで頑張っていこう」という決意表明をすることができず、帰国後、いざインターン活動をするとなっても不安がありました。スタッフの方々の助けも借りながら、何とか皆についていこうという思いで活動に参加しました。
そんな私が裁判員ネットのインターン生として仲間と一緒に活動し、たくさんの経験をしていることを実感できたのは、インターン活動も5か月が経ち、修了に近づいた頃でした。きっかけは、裁判員ネットが半年に1度開催している「フォーラム」でした。フォーラムの1か月前から本格的に準備が始まり、来場者にお渡しする報告書を作成するために傍聴した裁判の内容を分析したり、より多くの人がフォーラムに足を運んでくれるよう告知活動を行ったりしました。その中で、私は、公道でフォーラム開催のチラシ配りをする仕事の統括を担当しました。サポートしてくださった学生スタッフの方との打ち合わせや、種々のやりとりは、私がスキルアップしていく上での貴重な経験になりました。目標を設定し、その実現のためにはどういったスケジュールを立て、どのような手法をとるのか。その条件が見合う場所、時間帯、スタッフ人数、配布方法はどれか。自分の計画を参加スタッフにしっかりと把握・納得してもらうことの重要性や、限られた時間を効率よく、有効に使う必要性。ただチラシを配るという行為を実行するために、こんなに準備をしなくてはいけないのかと驚きました。慣れている人が準備をすれば、パパッと終わってしまう作業かもしれません。しかし、普段設計された活動に参加するだけであった私には、多くの時間が必要でした。スタッフの方の丁寧なアドバイスに何度も助けられながら、1つずつ仕事をこなすことができました。
実は私は、フォーラムを終え、自分がフォーラムのため・裁判員ネットのために何をしたのかを冷静に振り返ったとき、もっと自分にできたこと、自分がやりたかったことがあったのではないかと後悔しました。そこで、残り1か月間、もう少し自分のスキルを磨けるのではないか、まだまだ裁判員ネットで吸収できることがあるのではないかと思いました。スタッフの方に相談してみると、快く、私に新たな取り組みをする機会を与えてくれました。今、まだその仕事に取り組んでいる最中ですが、この取り組みが終わった後、また新たな気づきや次につながる成長課題を得ることができるのではないかと、今からわくわくしています。
裁判員ネットでのインターンシップでは、あるタスクに取り組む時、その作業が得意な人に優先的にタスクが与えられるわけではありません。能力の有無以上に、インターン生の「やってみたい、チャレンジしたい」という気持ちを尊重してくださり、挑戦する機会を思う存分与えてくれます。このような裁判員ネットのインターンシップに参加することができて本当に良かったです。
■共に仕事に取り組む中でスキルアップを実感
第4期インターン生・佐藤愛美さん(文学部・3年)
真剣なディスカッションをやりたい、という理由で裁判員ネットのインターンシップに参加しました。
私が描いていたインターンシップ像は、インターン生のみで活動し、スタッフはそれを監督する、といったものでした。ところが裁判員ネットのインターンシップは、私の想像したインターシップ像とは全く違うものでした。ここでは、スタッフとインターン生が互いにコミュニケーションを取り合って組織を運営していくという方針を取っています。スタッフの助言を頂くという点では他のインターンシップと同じだと思いますが、裁判員ネットではインターン生もスタッフと共に仕事に取り組むという点で大きな差異があります。共に仕事を行うことで仕事のテクニックを間近で見ることができ、ただ助言を受けるよりもスキルアップできたのではないかと私は感じました。
初めはスタッフの方々と自分のスキルの差に戸惑い、これから自分はやっていけるのだろうか、もしかしたら参加しない方が良かったのではないか、と不安でした。ですがスタッフの方々はみな優しく丁寧で、ディスカッションの流れについていけなくなったり言葉の意味が汲み取れなかったりした時には優しくサポートして下さいました。そのおかげで私は安心してディスカッションに参加することができました。
活動全てが刺激的なものでしたが、特に印象に残っているのは市民フォーラム開催にあたっての広報活動の内、公共施設と高校へのビラ設置作業のマネジメントを担当したことです。何かのマネジメントを担当するのは生まれて初めてで、何を最初にしたら良いのか、何をいつまでに終わらせればよいのか等、何もかもわかりませんでした。右往左往していたところ、学生スタッフの方から的確な助言を頂いたことで、自分の立場を理解しマネジメントに集中することができました。途中体調を崩してしまい、終盤の全体的な広報活動に参加できなかったことが残念ですが、この広報活動は特に成長できた経験であったと非常に満足しています。
裁判員ネットはアットホームな雰囲気でありながら妥協しない姿勢を持ち、時に励まし合いながら共に切磋琢磨していく団体です。自分を成長させる場としてはこれほど素晴らしい場はないように思います。
■裁判員ネットとの「出会い」
第4期インターン生・長田咲さん(文学部・3年)
私が今回裁判員ネットのインターンシップに参加することになったのは、偶然インターネットでインターン生募集のページを見つけたことがきっかけでした。大学生活も半分が過ぎ、淡々と過ぎていく毎日に私は何か物足りなさを感じていました。一つのことに一生懸命取り組みたい、自分を変えたいと思っていた時、裁判員ネットのインターン生募集のページを見つけ、思い切って説明会に応募しました。法律についての知識は全くありませんでしたが、法律知識がない私だからこそ社会に発信できることがあるのではないかと思い、インターンシップに挑戦してみようと決心しました。
インターンシップが始まり、私は「市民モニター」として初めての裁判傍聴を経験しました。これまで裁判所にさえ行ったことがなかったため、傍聴初日は非常に緊張しました。法廷に入り、公判が始まった後も、まるで自分が異空間に迷い込んでしまったかのように茫然としていたことを今でも覚えています。裁判傍聴は私が初めて「司法」に触れることができた、非常に貴重な体験でした。
私は今回のインターンシップを通して「聞く力」を身につけることができたと思います。これまでは自分の意見を周りに知ってもらいたいという気持ちが強く、他の人が話している時も次に自分は何を言おうかということばかり考えていました。しかし、様々な意見が飛び交うディスカッションを重ねることで、なぜこの人はこう考えたのか、自分と違う点はどこなのかなどについて考えるようになり、他者の意見を自分の中できちんと咀嚼することの大切さを知りました。事実は一つでも、それをどう解釈し、受け止めるのかは人それぞれです。他者の意見を聞くことで、自分の視野が何倍にも広がるのだと実感しました。
裁判員ネットでは、仕事は与えられるものではなく自分で取りに行くものだということを学びました。自分でやりたいと志願することで仕事に対する強い責任が生まれ、最後までやり遂げようという高いモチベーションに繋がります。時にはうまくいかなかったり、絶対に成功させなければという責任感からプレッシャーに押しつぶされそうになったりしたこともありました。しかしお互いを認め合い、助け合いながら共に困難を乗り越えることができる裁判員ネットのみなさんのおかげで、私は自分の仕事をやり遂げることも、また自分自身を成長させることもできたと思います。そんな素敵な仲間に出会えたということは、私にとって非常に貴重な財産です。もしあの時裁判員ネットのインターン生募集のページを見つけなければ、大切な仲間、社会との繋がり、そして今の自分にも出会うことができなかったと思います。裁判員ネットに出会えたという「縁」に感謝し、これからもたくさんのことに自ら挑戦し、たくさんの方と出会い、自分を成長させていきたいです。
その他のインターン体験記はこちら
裁判員ネット・インターン体験記 その④
2011年6月22日
裁判員ネットでは、定期的に裁判員ネットで活動する学生の方をインターン生として募集しており、このたび第5期インターン生の募集を開始しました。インターン生は、裁判員制度市民モニター企画・運営などを担当し、それを通して裁判やそこから見える社会の問題点について取材や議論を通して自分たちで考え、広く発信する活動をしています。
今回は、これまでのインターン生の「体験記」をお届けいたします。裁判員ネットでの活動に興味を持たれた方や、「インターンをやってみたい」と思われている学生のみなさんは、ぜひご一読ください。
■社会とのつながりを実感
第3期インターン生・荒谷有紗さん(法学部・1年)
私がインターンをはじめたのは、大学のサークルの先輩からの一通のメールがきっかけでした。「裁判員ネットでインターンをやらないか」という誘いに迷わず返答ができたのは、当時、私が自分自身の大学生活に対して疑問を抱いていたからだと思います。辛かった大学受験を終え、憧れていた大学生になり「自由な時間」を多く手にしたものの、現実の大学生活は何をするでもなく、毎日をただ過ごすだけで、高校時代に思い描いていたものとはかけ離れており、私はどこか満たされない思いを感じていました。「自分はいったい何のために大学に入ったのか。」入学して数ヶ月が経ち、私は自分の方向性を見失ってしまっていたのでした。このような戸惑いに、また、大学生のうちに何かを成し遂げたい、成長したいと願う気持ちに、一つの道筋を示してくれたのが裁判員ネットでした。
インターンを始めるにあたって裁判員ネットから伝えられた言葉で印象に残っているものがあります。それは「インターン生を学生としてではなく、一社会人として、仲間として扱う」というものでした。この言葉は、高校を卒業したばかりの私にとって、正直なところプレッシャーに感じられました。実際、インターン生に求められるものは非常にレベルが高く、一番年少であるということに「甘えていたい」と考えていた私にとっては、辛いと感じられることもありました。しかしこの求められるレベルの高さによってこそ、具体的な形となって社会へと発信されるものが出来上がるのだということに気がつくことができました。そして、この社会とのつながりこそが、私がインターン生として活動した中で得た最も大きな体験です。
私は2011年11月に行われたフォーラムにおいて、報告書の作成に携わり、また発表者として裁判員制度について報告する機会がありました。当日は大勢の来場者された方々にその報告書が手渡され、また発表を聞いて頂き、たくさんの感想やご意見を頂きました。そして社会にメッセージを発信するということの意味と意義を深く実感しました。またこのフォーラムが報道されたことから、より幅広く社会に発信しているのだということも実感しました。
このような社会とつながるという経験は、今までの生活では決してなかったものです。自分たちが作り上げたもので社会と直接つながることができるのだという気づきは、私自身の今後に大きな影響を与えるものになったと思います。
■インターンで培った積極性
第3期インターン生・嶋村創さん(情報コミュニケーション学部2年)
私は「人前でも堂々と話せるようになりたい」という想いからインターンを始めました。私は友人たちの間では気軽に話せても、発表などになると緊張してうまく話せなかったのです。そのため大学生活でも大勢の前で発言することを極力避けていました。しかしそんな私の想いとは裏腹に、学年が上がるにつれてゼミやサークルなどでの発表の機会は増える一方でした。「いつまでも逃げてはいられない。」と考え始めた時、友人からインターンの誘いを受けたのです。良い機会だし、とにかくインターン中は何事にも積極的に挑戦しようという決意のもとに応募しました。
インターンでは先ず人前で積極的に話すことを心がけました。裁判員ネットでは定例会議や裁判傍聴後のディスカッション、イベントやホームページなど各担当者によるミーティングなど人前で話す機会が沢山あります。初めのうちは不安でしたが、回を重ねるごとに少しずつではありますが、発言できるようになってきました。最終的にはフォーラムで大勢の人を前にして発表することもできました。それは以前の私では想像もつかないことでした。どんなに苦手なことでも諦めずに取り組めば克服できると思い、今では大学など色々な場面でも、臆することなく発言することができるようになりました。
また、このインターンでは問題意識の高いメンバーと出会うことができました。彼らとのディスカッションを通して私自身も大きく成長できたように思っています。例えば裁判傍聴の際自分では気付かなかった問題点が、周りの意見を聞くことで見えてくるということが本当に沢山ありました。それらを通して、視野が広がりを感じるのと同時に、自分の意見を伝えようとすることで、私自身の考えも深まりも実感しました。
さらに、人と協力することの大切さも再認識しました。一人では到底できないようなことも、全員で情報を共有して仕事を分担することで達成することがし可能になります。ですから、一人一人が役割を担うというのはとても大切なことであると気付きました。もちろん辛いときもありましたが、周囲に相談することで乗り切ることができました。なにより他のメンバーの頑張っている姿が力になりました。お互いに助け合えるメンバーに出会えて本当によかったと思っています。
私は裁判員ネットでのインターンを通して、自分を変えることができましたと感じています。もしこのインターンに参加していなかったら、今でも人前に立つことから逃げ回っていたかもしれません。貴重な機会を与えて頂いたことに感謝しています。そして真に尊敬できるメンバーと出会い、彼らと協力してフォーラムを成功させることができました。このことは私にとって何物にも代えられない貴重な経験になりました。このインターンで培ったことを活かして、今後も積極的に活動していきたいと思っています。
■今後のステップアップにつながる経験
第3期インターン生・吉川有佳里さん(法学部・3年)
まわりの友達が企業のインターンへの参加を決める頃、大学のキャリアセンターで裁判員ネットのインターン募集のチラシを見つけました。私の中で「インターン」というものへの参加意欲は決して高いものではありませんでしたが、「何かに熱く取り組んでみたい」「裁判員制度についてもっと知りたい」という言葉に惹かれるものがあり申し込みを決めました。
私はこのインターンで、3つの目標を立てて取り組みましたので、その目標に則してインターン活動を振り返りたいと思います。
①裁判員制度に関する知識を身につける
私は法学部生ですが、裁判員制度については「そのような制度がある」という程度の知識しかありませんでした。そんな中で実際に裁判所に足を運び裁判員裁判を傍聴することは、私にとって大変貴重な経験となりました。3つの裁判を傍聴し、内1つは全日程を傍聴しました。5日間続けて裁判所に通うという経験はもちろん初めてのことでした。目の前にいる被告人の姿や裁判員の表情は今でも覚えています。実際に制度が運用されている現場を目にすることで、自身の裁判員制度に対する考えを深めることができました。
②アウトプット力を高める
私は物事をわかりやすく伝えることが苦手だったため、この目標を立てました。他のメンバーの発表やディスカッション、レポート集を見ていると自分の力不足を感じることもありました。一方でアウトプットの機会が何度もあったこと、他の人の活動が目に見える環境はとても刺激的でした。今後はインターン中に頂いた様々なアドバイスを活かし、さらにアウトプットする力を高めて行きたいと思います。
③「社会人」としてのマナーを身につける
フォーラムにより多くの方に足を運んでいただくため、各方面の皆さまに広報活動へのご協力の依頼を行うにあたり、私が統括する役割を担いました。その際私の未熟さ故に、私自身戸惑うことや逆に周りに迷惑をかけてしまうこともありました。しかし、周囲の皆さんからアドバイスや助言を頂きながら、最後までなんとか成し遂げることができました。フォーラム当日、沢山の方々にご来場いただき、広報の成果が出たことはとても嬉しかったです。社会人としてマナーを守りながら責任を全うすることの重要さを、肌で感じた瞬間でした。
私はインターンの体験を通して、とても大きな充実感を得ることができました。大変なこともありましたが、スタッフや同期のインターン生に助けられながら最後までやり遂げることができました。また、これまで気がつかなかった自分の欠点や、逆に自分が得意としている部分が少しずつ見えてきました。そしてこのインターンの経験は、今後のステップアップに繋がる経験だったと思っています。
■「考える」ということを学んだ
第3期インターン生・榊原樹さん(法学部1年)
裁判員ネットのインターンには先輩に誘われたことをきっかけに参加しました。当初はこれほど多くのことを学び、体験し、実践する生活が始まるとは思いもよりませんでした。あまりにも早く、そして充実した期間だったと感じました。
インターン開始直後は、とにかくついていくのに必死で、かなり辛かったのを覚えています。今までにやったことのないことに苦戦しながら参加していました。しかし、時間と経験を重ねていくうちに、いろいろなことを学び、考えられるようになっていくのはとても楽しかったです。インターンの終盤は「力がついてきた・・・かな?」と自分の成長を感じながら活動することができました。ここでは特に観点の広がりと仕事をする上での学びについて述べたいと思います。
私は「執行猶予と保護観察」について裁判員裁判と関連付けながらレポートをまとめることを担当しました。大学ではこういった「刑事政策」については1年生では触れることはありません。ですからこういった分野に接することができたのは、自らの考えを深める良い機会でした。また、裁判員裁判を傍聴したのですが刑罰というものを考えるとき、これまでは「刑期の長さ」という観点でしか考えられなかったのですが、「何が被告人にとって最良か?」という点にも目が向くようになりました。
また「仕事をする」上でも学びがありました。例えば目の前の作業のことだけを考えるだけでなく、もっと広く目的や意義も考え、「何が最良か」も考えられるようになったことです。インターンではひとつの場面から学んだことを次の行動につなげることができるような機会が数多くあります。まさに「学校では教えてくれない」部分を体当たりで学べたと思っています。インターンの後半にはフォーラムの広報活動を担当したのですが、ここでは今まで学んでこと、経験したことの全てをぶつけ、最高をめざして取り組みました。その結果約150名の方にご来場して頂き、とても大きな励みとなりました。
このインターン活動ができて本当によかったと思っています。インターンを終えたこれからもここで学んだことを最大限に活かし、常に自分を磨いていきたいです。
現状で満足することなく、「初心忘れるべからず」。
周りから頼りにされ、それに応えられる人に。
周りにいい影響を与えられる人に。
そんな人間になれるようにこれからも精進していきたいと思っています。
■自分の考えを発信することで得たこと
第3期インターン生・野倉佳保さん(法学部・3年)
私がインターンとして色々なことを経験し、感じたことを書きたいと思います。
まず裁判員ネットに参加することで人の意見を聞き自分の意見を言う機会を多く得ることができました。私は人前で話すことがとても苦手で、最初は会議に出ることさえ不安でしたが、例えば裁判を傍聴した後に意見交換を行うのですが、こういったディスカッションを重ねるうちに、積極的に発言するスタッフや同期のインターン生、そして市民の皆さんに影響を受けて、次第に私も自分の意見を言えるようになってきました。
また文章を書き、まとめる力がついたように感じています。私たち3期インターン生には裁判員制度に関連する用語についてのレポートを書くという課題があり、スタッフの弁護士に見てもらって何回も書き直しを重ねました。最初にレポートを提出した際に真っ赤になって返ってきたときは大きなショックを受けましたが、これだけ熱心にレポートを見てもらえる機会はそうないと思い、本を読んだり新聞記事を集めたりして何とか書きあげることができました。また、裁判員制度に関するイベントに参加してレポートを書く機会もあり、そういったイベントに参加するということ自体が私にとっては新鮮な経験で勉強になったと思います。難しい内容でまとめるのに苦労しましたが、私が書いたレポートがホームページに掲載された時は達成感がありました。
さらに、皆と協力することの大切さを実感することができました。例えば2010年11月のフォーラムに向けての準備は地味な作業で根気が必要でしたが、当日は会場がほぼ満席に埋まったときは胸がいっぱいになりました。私がここまでインターンを続けられたのも、素晴らしい同期のインターン生やスタッフの頑張りに刺激を受け、支えてもらったからです。振り返ってみるとあっという間でしたが、充実した時間を過ごすことができたと思います。
裁判員ネットの皆さんに出会うことができて本当に良かったです。ありがとうございました。
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裁判員ネット・インターン体験記 その③
裁判員ネットでは、定期的に裁判員ネットで活動する学生の方をインターン生として募集しており、このたび第5期インターン生の募集を開始しました。インターン生は、裁判員制度市民モニター企画・運営などを担当し、それを通して裁判やそこから見える社会の問題点について取材や議論を通して自分たちで考え、広く発信する活動をしています。
今回は、これまでのインターン生の「体験記」をお届けいたします。裁判員ネットでの活動に興味を持たれた方や、「インターンをやってみたい」と思われている学生のみなさんは、ぜひご一読ください。
■学生であっても役割と責任をもつ
第3期インターン生・大江実花子さん(外国語学部・3年)
私のインターンへの参加目的は「学生という立場から社会と関わることを経験する。」ということでした。しかし、私の期待はいい意味で、見事に裏切られました。
裁判員ネットの活動においては、基本的に学生であろうと社会人であろうと関係なく平等に扱われ、個人個人が尊重されます。誰かが発言をすれば全員が全力で耳を傾けてくれ、自発性を尊重し、インターン生にも年齢や立場に関係なくどんどん責任ある役割を与えてくれるという環境は、とても恵まれていたと思います。
裁判員ネットでの活動は、学生でありながら社会に対して責任を負うことを求められます。扱うテーマも「裁判員制度」という社会的な関心も高いものであることから、少なからずプレッシャーに感じることもありました。しかし、裁判員ネットは社会人スタッフ、学生スタッフの方々があらゆる面でフォローをして下さるので、不安は取り除くことが出来ますし、何より自分の意欲さえあればいくらでも成長することが出来る場所だと思いました。私は所属が法律系の学部ではなかったので司法の知識は全くありませんでしたが、スタッフの方々が一般的なことから専門的なことまで、幅広く、かつわかりやすく指導して下さったお陰で、抱えていた不安を取り除くばかりか更なる興味を広げることができました。同期で活動していたインターン生の仲間たちも、とても成長意欲の高いメンバーが多く、たくさんの刺激を受けることができました。
また裁判の傍聴を経験し、裁判員制度というまだ始まったばかりの制度を目の当たりにしたことで、私自身、自分なりの問題意識を持つことが出来たと感じています。裁判員制度が始まったことによって、私たち一般市民にとっては今まで別世界のことのように感じていた司法の世界がぐっと身近な出来事となったのだということを実感しました。そしてさらに、これを私達はどのように受け入れていくべきなのかという問題意識を共有する手段が必要であるとも思いました。この問題に対する解決策を見つけることは決して容易なものではないと思いますが、このインターンで得た経験をもとに、これからも自分なりの答えを模索していきたいと思います。
■現場を知ることの大切さ
第3期インターン生・讃岐健太さん(法学部・1年)
インターンを終えてみて思うのは、この4カ月が非常に濃いものだったなということです。大学に入ったばかりで何をしようか迷っていたところにインターンをやらないかという誘いがあり、とにかくやってみよう、という思いで参加しました。活動を続けていく中で、さまざまなことを学ぶことができました。これからの人生で必要になること、知っておいたほうが良いこと、これらを学べただけでもインターンとして活動した意義があったと思います。
裁判員ネットの活動では裁判員裁判の傍聴が重要とされます。僕個人は7件の裁判を傍聴しました。裁判員裁判は刑事事件が対象となりますから、殺人や放火など重大事件の裁判を数多く見ることになりました。その雰囲気を正確に伝えることができるのは難しいですが、人の一生がかかった現場にいるのだという思いから、傍聴席にいる自分が緊張することもしばしばでした。裁判の傍聴のみに関心があるという人もいるかもしれませんが、裁判員ネットでは傍聴を踏まえて如何に考えるかということを大切にしています。そのような意識を持って裁判を見るのと、ただ見るのでは全く違うことだと感じています。
インターン活動の集大成としてあるのがフォーラムです。地道な準備が実を結び、多くの方に参加していただくことができました。フォーラムはメンバー全員が協力し合って作っていくものです。こうした活動の成果か、最近では各種メディアに取り上げられることも増えてきて驚いています。
こういった形で注目が高まっている裁判員ネットですが、その一員として行動するときには社会人としての責任が伴います。僕もインターンの最初に言われましたが、これが学べたことの中で最大のものだと思います。学生は普段社会人として扱われることはありません。そういった普段とは違う環境に身をおくことで初めて分かること、やらなければならないことが見えてくると思います。
もしインターンとして活動してみようか迷っている人がいましたら、言いたいことは一つです。やって損はありません。ぜひ積極的に取り組んでみてください。
■新たな視点が身に着いた
第3期インターン生・下地景子さん(社会情報学部・3年)
裁判員ネットのインターン生として活動した約半年間、日々の関わりの中から、たくさんのことを学んだと思います。特に一番に身についたと思うことは新たな視点で物事をみることです。
インターンをスタート前の事前研習で、スタッフの方が私たちインターン生を「社会人として扱う」と明言されました。入学前の新入生のようなどきどきと、苦手な法律分野への挑戦で不安に思っていた私にとって、「社会人」として振舞えるかどうかプレッシャーでもありましたが、「期待されているのだ」と誇らしく感じられるものでもありました。これがまず一つ目、一人の社会人としての視点を心がけるきっかけです。
二つ目は実際の活動で裁判を傍聴したり、同じ学生や市民の方と意見を交わしたりと、普段の生活では関わることのなかった物事や人々との関わったことで、多様な視点で考えられるようになったことです。同じ場面を見聞きした者同士が意見を交わす上で、自分が全く気づかなかった点や発想に何度も驚き、なるほどと考えさせられました。
また、意見を交わす上でもっとも大事なことは正解・不正解ではなく自分の意見を持つことが重要なのだと気がつきました。筋が通っていること、意味のあること、意見に自信を持つこと。そしてそれを持つためには自分自身をも見つめ直す目線も大事だと、改めて心がけるようになりました。
そもそも、私がインターンを始めようと思ったきっかけは、新しいことや経験したことのないことに関わり、少しでも成長したいと思ったからでした。その点において、苦手意識のあった法律分野に関わり、新しい視点を得られたことは大きく自分自身の成長につながったのではないかと思います。苦手意識そのものは、裁判員ネットのインターンを経験した現在もやはり変わらず残ってはいますが、「苦手というだけで敬遠していてはもったいない」貴重な経験ができ、またそこから得るものがありました。この機会に裁判員ネットに関われたことを本当に嬉しく思います。ありがとうございました。
■改めて司法と向き合う
第3期インターン生・秋山広輔さん(法学部・2年)
夏休みをバイトと遊びだけで使うのは勿体ないと考え、インターンでもしてみようかなと色々な団体を調べていたところに、タイミング良く裁判ネットの学生スタッフをやっている友人からお誘いのメールを貰いました。それまで法学部に所属してはいるものの、興味の対象は法律以外に向いていたのですが、「せっかく法学部に所属してるのだし、法律関係のインターンをやってみるのもいいな」と思い、インターンの面接を受けました。そうして始まったインターンですが、この期間は非常に内容の濃いものになりました。
この4ヶ月間で得たものは、当然のことながら裁判に対する知識があると思います。ある程度裁判についての知識はありましたが、実際に裁判を傍聴・模擬評議を経験してみると、それが本や授業から得ただけの知識であり、経験の伴っていない中身の薄いものであることを痛感しました。「責任能力」の判断や立証などについて、裁判を傍聴するまではそれほど困難なものではないと思っていましたが、それが間違いであったことを知りました。
またインターンでは、自分の考えを言葉にする訓練ができたと思います。私は自分の考えを言葉にするのが苦手でした。しかし模擬評議などでは自分の考えをしっかり言わなくてはなりませんでした。自分の出した考えが、「適当なもの」や単なる感情論で考えたものではないと周りに示す必要があったからです。まだ講義型の勉強しかしてこなかった自分にとって、非常に貴重な訓練の場になりました。
このインターンで得たものは、裁判員になったときの「心構え」だと思います。インターンを始めるまで、いつか自分も選ばれる可能性があるにもかかわらず、裁判員制度をあまり身近に感じていませんでした。もしインターンをしていなければ、裁判員に選ばれた時、困惑するだけだったと思います。しかしこの経験を通して、法廷の知識・法廷内の考え方などを知った今は、もし選ばれたらしっかりと裁判と向き合うことができると思います。
最後にこの4カ月間、自分を支えてくれた同期やスタッフのみなさんへお礼を述べたいと思います。みなさんのお陰で、非常に充実した期間になりました。ありがとうございました。
■長期インターンだからこその経験
第3期インターン生・脇田基代さん(経済学部・2年)
私が裁判員ネットの第3期インターンに応募したのは、知人が裁判員ネットで活動をしており、その知人からの告知でインターンの募集を知り、また、自分が将来法曹関係の仕事に就きたいと考えていたことから裁判員ネットの活動に興味を持ったからです。
インターンというと1週間や1か月など短いものが多いですが、裁判員ネットのインターンは4ヶ月以上という長期に渡るものであり、そのような長い時間を、普段あまり接する機会のない弁護士や社会人の方や他のインターン生と過ごすというのはなかなか経験できることではありません。インターンが始まる前の研修で、時間を有効利用するための手帳の使い方や社会人としての最低限のマナーを教えていただき、そうした基本的なことから教わったのも、長期インターンならではのことだったと思います。
また、裁判員ネットの活動の1つに市民モニターがあり、私もこれに参加したのですが、ここでは、裁判員裁判を傍聴するだけでなく、傍聴直後の記憶が新しいうちに傍聴した裁判についてみんなで意見を交換し、議論し、判決前には模擬裁判を皆で行います。また、議論の内容や疑問点などに関しては専門家である弁護士の方に意見を求めることもでき、法律や裁判員裁判についてあまり詳しくない私でもただ裁判を見るだけでなく、その裁判についていろいろなことを考えることができ、非常に良い勉強になりました。この「市民モニター」は、市民が裁判員裁判について考える良い機会になると思うので、是非これからもっとたくさんの方に参加していただけるといいなと思います。
インターンの最後の方は、資格試験の勉強など他の面で忙しかったこともあり、他のインターン生よりも参加頻度が下がってしまったのですが、社会人スタッフの方に相談したり、協力していただいたりしながらなんとかインターンを最後まで終えることができました。このインターン生の活動の集大成とも言えるフォーラムに約150名の方がいらっしゃったのを見たときは、本当に感慨深いものがありました。夜中までかかってレポートを作成したりと大変な時もありましたが、皆さんの協力を得ながら最後まで投げ出さずに終えることができて良かったです。作業に追われ「いっぱいいっぱい」になっていた時に相談に乗って下さったスタッフのみなさん、インターン生として一緒に頑張ってきたみんなには本当に感謝しています。ありがとうございました。
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フォーラム「裁判員制度・市民からの提言2011春~検証、裁判員制度の2年」開催報告(2)
2011年6月18日
裁判員ネットでは、裁判員制度開始から2年目の節目である5月21日(土)、東京都文京区のお茶の水女子大学にて、フォーラム「裁判員制度・市民からの提言2011春~検証、裁判員制度の2年」を開催しました。当日は一般からは約120名、関係者を含めますと約140名の皆さまにご来場いただきました。本当にありがとうございました。
※開催報告(1)のつづきです。
■「裁判員制度・市民からの提言2011春」を発表
・14項目の「市民からの提言」を発表
つづいてフォーラム後半では「裁判員制度・市民からの提言2011春」を発表しました。これは、裁判を傍聴した市民モニターの声や裁判員を務めた方々との意見交換など、日頃の活動の中から、裁判員制度に市民が主体的にかかわるために必要だと考える項目を提言としてまとめたものです。裁判員制度は、来年2012年に見直しが予定されていますが、市民が裁判員として司法に参加する制度の趣旨からすれば、法律の専門家だけではなく、多様な市民による議論が活発に行われる必要があります。
そこで、裁判員制度開始から2年の節目である、このタイミングで「市民からの提言」として以下の形で発表しました。

1.司法リテラシーの向上に関して
①憲法に謳われている刑事手続き・裁判の理念(裁判を受ける権利、無罪推定の原則、黙秘権の保障など)を理解できるような法教育を行うこと
②裁判員裁判を傍聴する機会をつくること
③裁判員裁判の実施日程を事前に各地裁窓口及びインターネットで公表すること
④刑務所見学の機会を増やすこと。特に裁判員候補者で希望する人に対して優先して刑務所見学を実施すること
2.裁判員候補者に関して
⑤裁判員候補者であることの公表禁止を見直すこと
⑥裁判員候補者名簿掲載通知の中に、裁判を傍聴できる旨を案内し、問い合わせ窓口を各地裁に用意すること
⑦思想・良心による辞退事由を明記して、代替義務を設けること
3.裁判員裁判の公判・評議・判決に関して
⑧被告人が裁判員裁判を受けるか否かを選択できるようにすること
⑨予備日を設けるなどして審理日程を柔軟にすること
⑩無罪主張事件において多数決で有罪となった場合には量刑の評議に際して、無罪と判断した裁判員は辞退できるようにすること
4.裁判員経験者に関して
⑪裁判員裁判の控訴の有無及び控訴審の実施日程を事前に各裁判所窓口及びインターネットで公表すること
⑫守秘義務を緩和すること
⑬裁判員経験者に対する心のケアを充実させること
5.その他の課題に関して
⑭裁判官が記者会見などで裁判員制度について話す機会をつくること
※「提言書:市民からの提言2011春」はこちらより全文を見ることができます。どうぞご覧ください。
・意見交換-ディスカッション
これらの提言内容の詳細を報告したあと、会場の皆さんに挙手をしていただき、フリーに意見交換・質疑応答を行いました。その中には「そもそも裁判員制度は苦役を国民に強いるものであり、制度自体、反対である」というものや、「専門家に任し過ぎた結果、原発の事故など過ちを犯してしまったのも事実。市民の参加という形でチェックするという意味で、意義のある制度ではないか」といった制度そのものに対する意見。「法教育」の充実を望む意見。また、「刑務所は受刑者が生活しているところ、刑務所見学の機会を増やすには慎重な検討が必要では」「守秘義務の緩和についてはもっと市民の間で議論がされるべき」などといった、提言に対する意見も出され、予定の時間を超えつつ、活発な意見交換がなされました。

以上のような形で、フォーラムを開催いたしました。今後も制度の見直しに向けて、私たち市民の視点から裁判員裁判を検証し、声をあげてゆくことは重要であると考えています。これからも裁判員ネットでは、裁判員制度を私たちの問題として捉え、現状の課題を明らかにしつつ、制度のあり方や私たち市民のあり方について一緒に考えるイベントを企画していきたいと思います。また提言につきましても、できるだけ広く議論をする機会をつくり、来年の制度見直しに向けての正式な提言にまとめていきたいと思っています。
今回このフォーラムという形で、多くの皆さまのご協力のもと、その一歩が踏み出せたことに大きな喜びを感じています。そしてより一層、ひとつひとつを大切にして、声を積み上げて参りたいと思います。この場をお借りして、改めて皆さまに感謝を申し上げます。
(裁判員ネット理事・坂上暢幸)

















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