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人を裁くことの葛藤―「模擬評議」という体験から感じたもの―

2009年11月17日

091117

 

裁判員ネットでは、同じ裁判員裁判を複数のモニターで傍聴し、「もし自分がその裁判の裁判員だったら」という設定で、判決を評議する「模擬評議」を行っています。
これはお互いに議論をして自分たちの「判決」を出し、実際の判決内容と比較するものです。
裁判員裁判で出される証拠は、一部を除いて傍聴席の人も裁判員とほぼ同じものを見ることができます。したがって、傍聴者も裁判員と基本的には同じ情報を得た上で公判の内容を検討することができます。

 

今日は、その裁判員ネットの活動の一つである「模擬評議」に参加した、私の体験談をご紹介します。

11月上旬、東京・霞ヶ関の東京地裁である事件の裁判員裁判が行われました。そして検察の論告求刑、弁護後側の最終弁論が行われ、その裁判が結審した日、閉廷後都内の会議室で傍聴したメンバーによる「模擬評議」を実施しました。

6時間にも及ぶ議論ののち、私たちが出した模擬判決は「懲役7年」というものでした。
素人ばかりで専門的な知識はないながらも、六法をめくりながら、「事件の社会的影響力を考慮すべきだ」、「被告に更正の可能性があるならば刑務所に長く収容する必要はない」という意見など、それぞれ傍聴の際に見た被告の様子、検察から示された証拠、弁護側の主張、被害者の訴えなどを考えつつ、最後は実際の裁判員制度と同じように、多数決により「模擬判決」を出しました。

翌週、実際の判決が下されました。その判決は「懲役9年」。
この2年の差をどう考えるか、ということ。
どういったポイントでこの差ができたのだろうか。
選ばれる裁判員によって判決が変わってしまうのではないか・・・。
あるいは、素人だけの「模擬評議」そのものの限界なのでしょうか・・・。
裁判員の方たちはどう納得されているのでしょうか・・・。

判決を聞いた後、そういったたくさんの疑問と、ある種の「重たい」気持ちに包まれました。

「正解」というものがあるわけではないのですから、「答え合わせ」のようにできるはずはないのですが、どうしても釈然としない葛藤のような気持ちを抱いたのは事実です。

このとき、裁判員制度が施行された当時に最高裁判所が国民に向けて「気軽な気持ちで(裁判に)参加してください。」と話したことが思い返されました。
この言葉を素直に受け取ってよいのか、今でもとても揺さぶられています。

「模擬評議」のなかで一番難しかったのは、「一体なにを基準に刑務所への収容年数を決めればよいのか?」ということでした。
類似事件の判決と同程度にすべきなのでしょうか?
そもそも、7年と8年で選ばねばならない時、その一年の差にはどのような意味があるのでしょうか?
考えれば考えるほど、迷路のように同道巡りになってしまいました。

ただ、模擬評議という体験そのものは、私にとってはとても貴重なものでした。私たちが裁判員になったとき、市民の立場で何を考えるべきなのかということは体験してみないとわからないところだと思います。
実際の法廷では、被告人や被害者の方、様々な事件の関係者のみなさんを間近に感じます。現場でその「空気感」を全身で感じた上で、その裁判について考えを巡らすということは、裁判員になったときに何が待ち受けており、何を考えねばならないのか、といったことを想像する上では意義あるものだと思っています。

11月29日(日)のフォーラムでは模擬評議の内容もお伝えいたします。(詳細は下記をご覧下さい)

そしてこのような「体験」を交え、より多くのみなさんの話も伺ってみたいと思っています。
お時間に余裕のある方はぜひご参加ください。

(裁判員ネットインターン生・岩井信行)

 

■フォーラムのご案内

裁判員制度市民モニター結果報告 ~ 検証・裁判員制度の半年

日時:11月29日(日)19時00分~(開場:18時45分)
場所:代々木・国立オリンピック記念青少年総合センター「センター棟3階・304」

【アクセス】
◎住所:東京都渋谷区代々木神園町3番1号
◎最寄駅:「参宮橋」(小田急線)徒歩7分
⇒詳細地図はこちらから

【お申し込み】
※お申し込みは下記メールフォームより(締め切り:11月28日)
⇒メールフォームはこちらから

「フォーラム参加希望」と明記した上で、お名前、ご職業、電話番号、メールアドレスを記載の上、送信してください。
※メールフォームが起動しない場合は、下記アドレスに上記と同じ内容をお送りください。
※また、下記FAXにてもお受付しております。
◆メールアドレス:info@saibanin.net 
◆FAX番号:03-3255-8876



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