『裁判員制度と知る権利』―第4章「裁判員選任過程についての問題点」
2009年5月9日
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「知らない間に知らない人たちによって作られた、裁判員制度」と、私たち一般市民は自分にどのような影響があるのかという実感もなく、何となく受け入れようとしています。
でも、犯罪に手を染めた被告人の生い立ちや葛藤…。犯罪に苦しめられた被害者やその家族たちの涙や苦悩…。裁判員になれば、そういった全ての現実が実感とともに私たちの心にのしかかると思います。「人を裁く」という行為には、裁判官たちでさえ精神的プレッシャーを抱えると聞きます。そう考えたとき、「果たして自分は人を裁くことができるのだろうか?」という真摯な疑問が、誰でも自然に湧いてくるでしょう。
著者は「人が人を裁く」という視点から、「良心的裁判員拒否」という新たな選択肢を打ち出すとともに、現行の法律や手続きにおける具体的な拒否の機会を明確に提示しています。そして制度の見直しと裁判員拒否に伴う司法ボランティア(犯罪被害者への支援や加害者の更正など)や寄付の制度化を提案しています。
「自分には人を裁けない」と判断した人は、主体的に「拒否」することもまた、社会への責任ある行動だと言えるでしょう。もし「義務」というだけで裁判に参加して「面倒だから」という感覚のままで評議に加わり、それに基づいて安易な判決が下されたら…。被告人はおろか犯罪の被害者やその家族もたまったものではありません。ですから、拒否の選択肢があるからこそ、逆に参加を決意した裁判員の責任ある行動を導き出すことができるという、いわば裏表の関係だと言えます。
本書は共著ですので、この書評は第4章のみに関してコメントしていますが、裁判員に選ばれた後に直面する悩みと向き合う時の手がかりとなるはずです。
評:坂上 暢幸(裁判員ネット・スタッフ)