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ニッポンの岐路裁判員制度―脳から考える「感情と刑事裁判」

2009年4月15日

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この本は、人が人を裁くという本質的な課題を、「脳認知科学」の視点から焦点を当て、一般の人でも理解しやすい文章や図で説明しています。

筆者の伊東氏はもともとクラシックの音楽家という法律の専門教育を受けたことのない、いわば「法律の素人」です。しかし「表現のプロ」「脳認知科学」(筆者は大学院のメディア表現と脳認知の教員でもあります)の立場から、私達のような素人が「わかりやすさ」をうたう「裁判員法廷」で直面するであろう課題を分析しています。

例えば、裁判員法廷は「予想以上にIT化が進んでおり」パソコンやモニター画面で、証拠写真やプレゼン資料が提示されるわけですが、文字の色や画像の見せ方等で、いくらでも見る者の(裁判員に限らず、検察官や裁判官さえも)「感情」を操作する「演出」が可能であるという現状を筆者は指摘しています。また事件現場などの生々しい写真は人の感情に大きな影響、とりわけ恐怖心を与えます。そして人間は過度に恐怖心を抱かされると、脳内血流は極端に低下し、「人間はすべて『思考停止』の状態に近づいて」ゆくのだそうです。

筆者はそのような中では、裁判員も裁判官も思考レベルは低下するのと同時に、検察官も「悟性によるブレーキのレベルも下がって、感情が高ぶりやすくなることなどが懸念」しており、そうした「マインドコントロール」の結果、本来「理性によって律されなければならない」法廷が「感情が支配する場」になってしまうことに警鐘を鳴らしているのです。

そこで筆者は「法廷メディアのマインドコントロール・ガイドライン」を提言しています。これは、過度な感情操作によって法廷が混乱に陥らないようにするためのルール作りを「文字」や「画像」といったメディアによる表現方法に一定のルール整備する必要性を唱えており、その内容は「文字の大きさ」や「色」の使い方など細かな点にまで及んでいます。

同時にこの提言は、これから裁判員になる(かもしれない)私たちが、法廷だけでなく、テレビや新聞などの事件報道を見る上でも、非常に参考になるポイントも含まれていると思います。

裁判員制度とそこに参加する(かもしれない)私たちが「マインドコントロール」に陥らず、冷静にあるいは合理的に判断し、行動をしていくためにも一度は読んでおきたい本です!

評:坂上 暢幸(裁判員ネット・スタッフ)



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