
気骨の判決
2009年7月20日
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かつて戦時中、国家総動員の空気が重くのしかかる中で遺書を書いて国に逆らう判決を書いた裁判官がいました。
吉田久、命がけで東條英機と闘った裁判官です。
いわゆる「翼賛選挙」では、政府に非協力的な国会議員を排除する意図があったとされています。
聖戦遂行の美名の下に、国民の投票の自由を実質的に奪う露骨な選挙妨害が行われました。
他の選挙無効の訴えが退けられる中、吉田久は特高の監視や政府からの圧力に負けずに
戦時中に唯一の「選挙無効」の判決を下しました。
選挙無効となった選挙区では、戦時中にもかかわらず選挙がやり直されたのです。
時代の大きな流れに屈することなく信念を貫いた裁判官の生き様がよくわかる本です。
「司法の独立」という言葉が血と肉を与えられ、結実したものの一つが
この裁判であったといえるかもしれません。
今は、マスコミによって、大きな流れや空気がつくられる時代です。
裁判員制度のもとでは、私たちが、その空気に流されずに
信念をもって裁判に臨まなければならないのです。
司法の独立とは何か、裁判の役割とは何かを考えさせてくれる一冊です。
評:大城聡(裁判員ネット代表/弁護士)