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この国が忘れていた正義

2009年7月15日

 

この国が忘れていた正義 (文春新書)

著者/訳者:中嶋 博行

出版社:文藝春秋( 2007-07 )

新書 ( 185 ページ )


「いまの日本は犯罪者『福祉』型社会なのだ。…この社会では、犯罪者にセカンドチャンスを与えることが優先され、被害者の救済は当然後回しにされる」

 

  本書は日本の刑事政策に対して根本から疑問を投げかける。矯正関係予算として毎年2200億円(受刑者一人当たり330万円)もの多額の税金をかけながら、再犯率が四割近い更生プログラムの現状を、「大失敗の事業」と一刀両断する。

そして、著者は刑事政策の根幹を「更生モデル」から「賠償モデル」へと転換すべきだと主張し、その方法の一つとして「刑務所の民営化」を主張する。

「本書が提言する、刑務所の民営化は、犯罪者を立ち直らせるといった『神の仕事』から完全に手を引き、『人(として当然)の仕事』を始めることである。刑務作業に資本主義的原理を導入して、その利益を被害者に回すのだ。」

「むろん、どんな凶悪犯であれ立派に立ち直ってもらうのは一向にかまわない。しかし、そのまえに、人間としてやるべきことがあるだろう。自分たちが蹂躙した被害者にきちんと賠償すべきである。額に汗を流して働き、蛮行の償いをするのだ。そのための手段は唯一、刑務所労働しかない。」

 

 本書の後半では、学校での「いじめ」問題にも触れて、

「『いじめ』の中味をみていくと、すべて刑法上の犯罪に当たる。いじめとは学校犯罪なのである。」と、いじめっ子の教育権が優遇される原因の根底にも「犯罪者福祉型社会」があると指摘する。

他にも、神戸の連続殺人犯「酒鬼薔薇」らの更生プログラムや、日本とはまるっきり異なったアメリカの性犯罪者対策などの記述もあって興味深い。

 

 

 著者の主張は非常にユニークで大胆だ。「とんでもない考えだ」と非難する読者もいるかもしれない。実行性の面でも、まだハードルは多いだろう。

でも大胆な主張だからこそ、「刑罰とはどうあるべきか」という根本的な問題をもう一度考えさせてくれる。

評:田隈佑紀(裁判員ネットスタッフ)



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