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第9回裁判員制度フォーラム「市民から見た裁判員裁判」を開催しました

2013年11月21日

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今日、2013年11月21日(木)は裁判員制度が開始されてから、4年半になります。それに先立つ11月16日(土)、東京都文京区お茶の水女子大学にて、第9回裁判員制度フォーラム「市民から見た裁判員裁判」を開催しました。当日は約100名の皆さまにご参加いただき、本当にありがとうございました。

全国初の裁判員裁判と同時にスタートした裁判員ネットの「裁判員制度市民モニター」には、この4年半の間に260名以上が参加し、モニタリングの件数は520件を超えています。また、市民モニターとして裁判員裁判を傍聴した後に行っている「模擬評議」の実施件数は25件となり、これまでに210名を超える方に参加していただいています。

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フォーラムの第1部・レポートセッションでは、裁判員制度市民モニターとして裁判員裁判の傍聴・模擬評議・意見交換会を行った事例を詳しく取り上げ、モニター参加者からの意見を紹介しながら「市民の視点から裁判員制度がどのように見えているのか」を具体的に検証しました。そして実際に市民モニターに参加した学生メンバーが登壇し、自身の経験を踏まえて報告を行いました。

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続く第2部・トークセッションでは「裁判員制度の意義を考える~控訴審をめぐって」と題して、職業裁判官のみで行われている控訴審の仕組みなどについて解説と情報提供を行い、市民モニターが傍聴・模擬評議を行った事例のうち、一審・裁判員裁判での判決が控訴審で覆ったものを具体的に取り上げながら控訴審が抱える課題について考えました。

トークセッションの後半では、「裁判員をつとめること」や「現在の控訴審のあり方」をどのように受け止めているかについて、会場の皆さまにも参加していただきながら議論を深めました。ここでは、会場の皆さま全員に赤と青のカードを配布し、それを使いながら進めました。
例えば「裁判員になりたい」か「なりたくない」か。「仮に自分が被告人であり、もし選ぶことが可能」ならば「職業裁判官のみの裁判」か「裁判員裁判」どちらを選択するかなど、会場の皆さん全員に色カードを提示していただき、それぞれご自分の考えを表明してもらいました。そして、その理由ついてもたくさんの方に発言していただきました。

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今回、会場の皆さまと二者択一の質問をスタートに意見を交換しましたが、こうした質問のあり方自体、ある意味やや強引な側面があります。これは当日会場でも申し上げたのですが、私自身も、「裁判員になりたい」「なりたくない」という二者択一の質問に戸惑いや違和感を覚えることがあります。
それは「なりたい」「なりたくない」という言葉だけでは表現しきれない、微妙なニュアンスや無数の想いが捨象されてしまうからかもしれません。ある市民モニターの方が「積極的に『なりたい』と表現するのは躊躇するので『なりたくない』を選択したが、自分が選ばれたら『なるべきだ』とは思う」と言っていました。このように「なりたい」と「なりたくない」の言葉の間には無数のトーンがあるのではないかと思います。

二者択一という枠組で考えること自体は、時として物事を単純化させ、わかりやすくするという意味で有効な場合もあります。
しかし一歩立ち止まって、その枠組み自体を見直して考えることも、私たち市民が持つべき視点なのではないでしょうか。
特に裁判員として法廷に臨む際、より強く求められると感じています。

例えば、このトークセッションのなかで、弁護側が被告人の無罪を主張した裁判員裁判で、死刑判決となったある裁判のモニター事例を取り上げました。そこで「刑を判断するために裁判員が十分な情報を得ていたのかと考えたとき、法廷で示された証拠は、『有罪か無罪か』を判断するための証拠がほとんどで、量刑(情状)を判断するための証拠は乏しいのでは」という指摘をさせてもらいました。これに対して「そういった場合は裁判の運営方法として有罪か無罪か(事実認定)の判断と、量刑判断をわける手法をとるべきではないか」といった意見が会場から出されました。

議論の枠組み自体も、一歩距離を置いて見つめなおし、再構成すること。
公正な判断をするためにも、より望ましい裁判のあり方を模索するためにも、市民が持つべき視点とはこうしたことも含まれるのではないでしょうか。

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今回のフォーラムでは二者択一の質問から始まって、様々な考えや意見に触れることができました。また「裁判員候補者はどのように選ばれているのか?」「どうしたら『司法リテラシー』を身につけることができるか?」など、会場の皆さんからたくさんの質問もお寄せいただき、活発な質疑応答、意見交換がなされました。

今後も裁判員ネットでは、裁判員裁判市民モニターやフォーラム、講座・出張授業などを通じ、多くの皆さまとともに市民の視点から裁判員制度について考える機会をつくっていきたいと考えています。

裁判員ネットのフォーラムは、次回で第10回目を迎えます。
開催時期は、裁判員制度開始から5年の節目となる2014年5月中旬を予定しております。

今後とも皆さまのご理解とご協力のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。

(裁判員ネット・坂上暢幸)



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