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【シリーズ・海外の司法参加】第3部:ドイツ編(中)―参審制度の運用状況

2010年8月31日

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裁判員ネットでは、諸外国の市民の司法参加について調査する活動を行っています。日本の裁判員制度と世界の国々の裁判制度を比較・検討しながら、 市民の司法参加について海外にも視野を広げることで、日本の裁判員制度についての議論をより深めることができるのではないでしょうか。
この連載では、韓国、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアなどを取り上げ、それぞれの国につき3回程度に分けて定期的に連載をしております。各国の事情を知ることで日本の裁判員制度を考えるうえで参考になることが数多くあると思います。どうぞ最後までご覧いただければ幸いです。

 

ドイツ編(中)―参審制度の運用状況

シリーズ・海外の司法参加の第3部、ドイツ編の第2回はドイツの参審制度の運用状況についてのご報告です。
前回はドイツの導入の背景や、概観を報告いたしました。そこで今回は、実際に参審裁判が行われた件数や、参審員へアンケート内容などについて見ていきましょう。

1.市民の選任

参審員はドイツ全体の男女比、年齢比や職業構成比などあらゆる階層から選任されるよう配慮されています。つまり出来るだけ「ドイツ国民の縮図」を再現しようとしているわけです。少し古いデータですが、参審員の職業は、1993年には自営業者17%、被雇用者60%、主婦18%、年金生活者3%、その他2%となっています。(※1)

2.参審員の数

参審員として、各裁判所の参審員名簿に記載されている参審員の数は、正参審員・予備参審員合わせて33,522人に上ります(1993年)。

3.参審裁判の件数

1993年のデータによると、ドイツ国内の裁判総数668,858件中、参審員裁判の件数は82,341件と全体の約13%です。これは同じく司法における「市民参加」を採用している日本と比べると、その違いは歴然としています。最高裁判所によると、日本の裁判員裁判は刑事通常事件(第一審)全体(97,826件)の2.7%、裁判件数は2643件です(2007年のデータに基づく試算)。前回も言いましたが、ドイツでは行政や労働に財政、少年事件などに関する裁判にも市民が参加します。ですから、ドイツではいかに幅広く市民が裁判に参加しているか、ということがデータからもわかると思います。

4.参審員の権限

参審員は裁判官と共に有罪・無罪を判定し、軽量まで決めるほぼ同等の権利を持っています。しかし、以下の点については参審員には認められておらず、裁判官のみに与えられた権限です。

①裁判の前に捜査機関が作成した調査資料を読むこと 
②判決理由を書く作業

ただ、上記の①が認められていない理由ですが、ドイツでは参審員は「法廷で提示された情報のみから判決を導くべき」でありという「口頭主義」が徹底されているという背景がある、ということも併せて指摘しておきます。

5.有罪率

1993年に終了した刑事裁判のうち、有罪となった割合は成人事件で84.2%、少年事件で63.7%でした。日本ほどではないものの、刑事裁判における被告人の有罪率は高いようです。

6.参審員の発言機会

さてドイツの参審員は十分に質問の機会を利用できているのでしょうか。この点について1993年、参審制の現状を調べる目的で、ドイツのマールブルグ大学が調査を行いました。この調査は参審員、裁判官、検察官に対して行われた調査ですが、その結果次のようなデータが出てきました。
表1のように、質問頻度について、裁判官・検察官(法律家・プロ)と参審員(市民・素人)の双方とも「少ない、まれ」「ほとんどない」「ない」と回答する割合が半数以上かそれに近い数値を示しており、法律家側も市民側も半数は参審員の尋問が「少ない」と実感しているということになります。

表1 参審員の質問頻度について(1993年マールブルグ調査・『陪審・参審制 ドイツ編』司法協会[1999]より作成) 

参審員の尋問頻度裁判官・検察官の認識(118人中)参審員の認識(123人中)
ほとんどいつも1人(0.8%)7人(5.7%)
しばしば8人(6.8%)10人(8.1%)
時々38人(32.2%)45人(36.6%)
少ない、まれ49人(41.5%)25人(20.3%)
ほとんどない20人(16.9%)24人(19.5%)
ない2人(1.7%)12人(9.8%)

 
7.参審制に対する評価

また、このマールブルグ大学調査によると「参審制に賛成か?」という問いに対し、参審員の98%、裁判官の76%、検察官の74%が「賛成」と回答しました。以下は参審制に対して「賛成」であることの根拠を示したアンケート結果です。この中で注目すべきは「より納得のいく裁判」が賛成の根拠としてあまり挙げられていないところにあります。その理由としては、法曹や司法への高い信頼があるからと考えられ、「司法運用状況の可視性」もあまり重視されていないことからも、そのことがうかがえると言えるでしょう。

表2 参審員制賛成の根拠(複数回答可)(1993年マールブルグ調査・『陪審・参審制度 ドイツ編』司法協会[1999]より作成) 

参審制に賛成する論拠参審員
(1095人)
裁判官
(133人)
検察官
(205人)
民主主義の原則49%58%47%
公判審理がより分かりやすくなる23%19%23%
より納得のいく裁判9%6%4%
参審員の人生経験を活かせる67%45%42%
教育効果21%28%6%
参審員による裁判官の制御33%34%35%
裁判官のマンネリ化の防止56%29%42%
司法運用状況の可視性14%21%9%
市民の法感情の影響58%18%33%
司法に対する一般的な信頼の増加23%51%51%

8.参審員と裁判官との意見の相違について

さらに、法廷での裁判官と参審員の意見の相違が判決に与える影響を明らかにしようとした「キャスパー・ツァイズェル調査」 によりますと、「有罪か無罪」をめぐって参審員と裁判官の意見のくい違いが発生した割合は、被告人が事実関係を否認している事件全体の約10%で起こっているそうです。また「量刑」に関する意見の相違は有罪事件全体の21%で起きています。

 

<注>

(※1)『陪審・参審制度ドイツ編』司法協会(1999)より。なお、以降の具体的データはこちらの資料を参照。

 

以上のように、今回はドイツの参審制度の運用状況についてご報告させていただきました。ドイツ編最終回となる次回では、改めてドイツの参審制度と日本の裁判員制度の特徴を比較して、そこから見える問題点を明示して、検討したい参りたいと思っております。それでは、次回をご期待くださいませ。

(裁判員ネット:田中浩太・服巻美香)

 

…………………………………………………………………………………………

【参考文献】
・『陪審・参審制度 ドイツ編』司法協会(1999)
・丸田隆『陪審員制度』平凡社(2004)
・紙谷説子・澤康臣『世界の裁判員~14カ国イラスト法廷ガイド~』日本評論社(2009)

【参考URL】
・各国の陪審・参審制度の比較(閲覧日2010年3月12日)
http://www.iiajapan.com/system/forum/28_sanko2.pdf
・独立行政法人労働政策研修・研究機構ホームページ(閲覧日2010年3月12日)
http://www.jil.go.jp/foreign/labor_system/2006_1/german_01.htm
・日本弁護士連合会「裁判員裁判HP―世界各国の市民参加制度」(閲覧日2010年3月15日)
http://www.nichibenren.or.jp/ja/citizen_judge/about/column1_ge.html
・最高裁判所ホームページ「司法スケッチ~歴史ある参審制~ドイツ」(閲覧日2010年3月15日)
http://www.courts.go.jp/about/sihonomado/pdf/68_sihouSketch.pdf
・首相官邸ホームページ「司法制度改革審議会 海外実状調査」(閲覧日2010年3月15日)
http://www.kantei.go.jp/jp/sihouseido/991118gijiroku5.html
・裁判員ネットホームページ「教えて裁判員制度!」(閲覧日2010年8月15日)
http://www.saibanin.net/lecture/outline.html

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