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裁判員制度の課題を指摘:フォーラム「検証・裁判員制度の1年」開催報告①

2010年6月26日

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 裁判員ネットは裁判員制度開始より1年が経過したことを受けて、6月12日(土)東京都板橋区の大東文化大学・大東文化会館にて、フォーラム「検証・裁判員制度の1年~市民から見た裁判員裁判」を開催しました。
 当日は大変多くの皆さまにご来場いただきまして、本当にありがとうございました。

 昨年より裁判員ネットは「裁判員制度市民モニター」を行ってきましたが、このイベントの前半・第1部では、各地の市民モニターのみなさんから集まったデータをもとに、裁判員制度の検証報告を行いました。次に後半の第2部では前半に出されたテーマに関してのトークセッションが行われました。このトークセッションでは、裁判員経験者や裁判員裁判を経験した弁護士、市民モニター経験者を交えての意見交換が行われました。
 このコラムでもイベント当日の様子について、皆さまにお伝えしたいと思います。まず今回はフォーラム前半(第1部)のご報告です。

■この1年間の裁判員裁判と市民モニターの実施状況

 まず第1部は裁判員ネット理事・坂上の進行のもと、これまでの裁判員裁判の状況について概観する調査報告と、モニターから集まった声をもとにした個別の裁判事例の報告を行いました。
 はじめに大東文化大学の皆川友佳さんよりこれまでの全国の裁判員裁判の実施状況、報道機関による裁判員経験者のアンケート結果、東京都内における裁判員裁判の実施状況等についての説明がなされました。

・これまでの裁判員裁判実施状況は?
 この1年間に全国で506件の裁判員裁判が実施され(2010年5月20日現在)、裁判員経験者の数は3070名となっています(注1)。裁判員裁判の判決傾向としては、「執行猶予」の場合「保護観察つき」のケースが増えたことが上げられます。これは被告人の「社会復帰」「更正」というものに市民たる裁判員は関心を寄せていることが伺えます。その一方では、性犯罪事件の場合刑が重くなる(いわゆる厳罰化)の傾向が見られることが報告されました。

私たちの調査によれば、東京都内における裁判員裁判で判決が出された裁判は、5月20日までに62件ありましたが、このうち強姦致傷、強制わいせつ致傷、強盗強姦などの性犯罪に関する事件は22件でありました。これは全体の約3割が性犯罪に関係する裁判であるということができます。このことから都内で私たちが裁判員になった場合、現在のところ、約3分の1の確率で性犯罪に関する裁判の審議を担当する可能性があるということが指摘できます。

・裁判員制度市民モニター実施報告

 裁判員ネットでは裁判員裁判を市民の皆さんが傍聴し、評価し、考える、「裁判員制度市民モニター」を実施しています。この1年間に全国で506件の裁判員裁判が実施されました(2010年5月20日現在)。このうち裁判員ネットへ寄せられたモニタリング結果は90件。23件の裁判を57名のモニターが傍聴しました(1人の方が複数の裁判を傍聴しているため、このような数字になります)。

 

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■市民から見た裁判員裁判の課題

・個別ケースから見る裁判員裁判
 次にこのフォーラムでは2つの具体的な裁判事例から裁判員裁判の課題点についての報告を大学生の稲田康平さん、竹越遥さん、服巻美香さんと坂上より行いました。

 事例の1つ目としては、高額医療費を苦にした家族殺人事件(ケース1)。2つ目としては少年による性犯罪事件を取り上げました(ケース2)。ケース1はモニターの皆さんから寄せられた声として「身近な事件」「自分や家族の中でも起こりえる話」と受け止めた方が多かったことから、今回取り上げました。また、ケース2は少年による性犯罪事件でしたが、先ほど報告したとおり、性犯罪に関係する裁判も今後考えなくてはならないテーマであることから今回取り上げました。

 ここではそれぞれの裁判の進行を、時系列に沿って「法廷で示された証拠」「証人尋問」「被告人質問」や「論告・弁論」「評議」(傍聴したモニターによって自分が裁判員だったらという仮定で判決を検討する‘模擬評議’を実施しておりその内容について)「判決」など、裁判の手続きや流れごとに詳細に分析し、それについての報告を行いました。この2つの事例から以下のような裁判員裁判の課題点が浮び上がりました。

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・浮び上がった課題
 ケース1では裁判を傍聴した多くのモニターから「証拠が足りないと感じる」との声が多く上がりました。また、「全体を通して被告人本人の事件前や事件時の実像が見えない部分がある」との指摘も出ました。さらに「事件の背景や全体像がつかめないままジャッジだけ迫られるのでは?」「これで決めてしまって良いのか?」といった率直な疑問と不安を訴える声もありました。ちなみにNHKがおこなった裁判員経験者215人へのアンケート調査(注2)によると、「判断材料が足りなかった」「どちらかと言うと足りなかった」という答えが、あわせて19%、5人に1人の割合であり、「証人が足りない」「背景をもっと詳しく知りたかった」という声が多く寄せられています。今回の市民モニターと同様の感想を抱いていた裁判員が一定以上いることが指摘できます。

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 またケース2を傍聴したモニターからは「なぜそこへの言及が必要なのか」という、「前提」の説明を求める声が多数あがりました。法廷で語られる内容の「ポイント」が強調されなければ、それが重要なのか、そもそも判断の材料として採用すべきなのかがわかりません。市民に対しては「その事実が重要である理由」「前提」を丁寧に説明しアピールすることが求められます。ですから「弁護士・検察の力量によって受け止め方が変わってしまうのでは」という指摘もありました。また市民の性犯罪への量刑感覚も今後検討すべき課題といえます。今回の裁判を傍聴した多くのモニターからは実際の判決内容が「軽すぎるのでは」という感想が相次ぎました。ケース2の判決は、過去の裁判の量刑傾向の範囲内におさまっていたことから、「評議のなかでどのような議論がされたのか知りたい」「どの程度市民の声が反映されたのか疑問」といった声もありました。 

 さらに、ケース2だけではありませんでしたが、裁判員への参加態度に関する指摘もありました。中には「眠っているように見えた裁判員がいた」「裁判員にはもっと質問をしてほしい」「裁判員の存在感が薄い。せっかくの裁判員制度の意味がない。」という厳しい意見もありました。

 このほかにも様々な角度から、裁判員ネットが収集したデータや、市民の皆さんから寄せられました声をもとにその現状と課題についての報告を行いました。

 次回以降、このコラムではフォーラム後半についてのご報告を致します。(つづく)

(裁判員ネット理事:坂上暢幸)

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(注1)共同通信ニュース(5/21)を参照(http://www.47news.jp/CN/201005/CN2010052001000680.html)[閲覧日20105/30]
(注2)NHK・ホームページ「解説委員室」(5/24)を参照。(http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/49420.html)[閲覧日2010/6/1]

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